太古より、人類は自然への畏敬をさまざまな形で表してきました。
花を手向ける行為もそのひとつです。
野の一輪の花を愛おしみ、その一瞬の命の光を目に見えない存在に奉るいけばなは、
自分自身もまた、はかない存在であることを確かめ、短い生への慰めとしてきたのではないでしょうか。
今回の展示では、大蔵山かた出た巨石を取り囲むように、同じ場所に自生している植物をいけます。
同じ土地から生まれた石 — 普遍的なものと、植物 — 限りある生命が交差する瞬間をご覧ください。
※今回の展示はご招待させていただきましたゲストの方のみ参加頂けるツアー展示となります。
KOSMOS
ギリシア語で、宇宙・調和を意味する「COSMOS」の語源。宇宙と人間、マクロとミクロコスモスの意識の設定であるインドのリンガ、日本の土偶、ヨーロッパのメンヒル、ドルメンに通底する太古の感覚を象徴することば。秋の大蔵山に咲くコスモスを想起させる。
片桐功敦 Atsunobu Katagiri
1973年、大阪府堺市に続く花道みさぎ流の家系に生まれ、幼少より花を学ぶ。中学卒業後、米国留学。1994年帰国。1997年、家元を襲名。2005年、堺市で教室とギャラリーを兼ねた「主水書房」を開設、若手アーティストの発掘、展示や出版など多岐にわたって展開。2013年から福島と大阪を行き来し、原発周辺の地で再生への願いを伝える作品を製作、それを収録した「SACRIFICE - 未来に捧ぐ、再生のいけばな」(青幻舎)を上梓。作品のスタイルは、小さな野草をいけたものから現代美術的なインスタレーション作品まで幅広いが、一貫していけばなが源流として持つ「アニミズム」的な側面を掘り下げ、花を主体として空間を生み出している。